ハリルの見事な采配がW杯出場を導く/激動の代表ウィークを振り返る
こんにちは。タッキーです。
少し期間が空いてしまいましたが…
まずは、日本W杯出場決定おめでとうございます!!!
前回も言いましたが、僕はこの試合観に行きました。
ということで今回は、日本代表の試合のレビューを中心にこの一週間の代表ウィークを振り返っていきたいと思います。
まずは8/31に行われたオーストラリア戦をいくつかの勝利のポイントに分けて振り返っていきます。
勝利のポイント①
大一番で発揮されたハリルの見事な采配
選考を含めたハリルの選手采配には今まで色々な賛否両論がありました。僕も「おかしいな」と思うことが何回かありました。ただこの試合に関していえば、スタメンから交代策までハリルの采配は見事の一言でした。ほぼ完璧です。ハリルごめんなさい。
スタメンはこちらです。
ハリルはこの試合の前、「自分がオーストラリアの監督になれるほど研究をした」と言ったみたいですが、まさにその研究が功を奏した形になりました。
ここ最近は流行りの3バックを使用し、強みであるはずのパワーや高さを活かさずにポゼッションサッカーに切り替え始めていたオーストラリアですが、そこに漬け込んだのが今回のハリルの采配でした。
まず3トップは右にスピードのある浅野、左に突破力のある乾を配置し、3バックを使用するチームへの対策として定番のウイングバックの背後(3バックの両サイド)のスペースへの狙いを明確にしました。特に現代表で最もスピードのある浅野はこの役割にまさにピッタリの適役でした。この狙いは試合序盤から大きな効果が現れ、マイボールになるたびにすぐさま相手両サイドの裏のスペースにボールを展開し、そのスペースを狙っていることを明確にすることで、オーストラリアは全体的にラインを下げるを得ませんでした。
というかそもそも前提としてオーストラリアはまだ3バックのシステムにさほど慣れていません。これがこの試合の大きなカギになりました。
先ほど述べたように、3バックの弱点としてウイングバックが上がった後のスペースを活用されることがよく挙げられます。3バックは4バックに比べて高い戦術理解度が求められますが、オーストラリアのウイングバックはまだ攻め上がった後の最終ラインへの帰還が少し遅いです。最終予選での他の試合でもその様子が少し見受けられました。
そしてそれに関連して、この試合の前に選手や監督が勝利のためのもう一つのポイントとして何度か口にしていたのが、奪ってからの速い攻撃でした。3バックの空いたスペースを有効活用するためにはもちろん遅い攻撃ではダメです。相手のブロックが整う前に素早く攻撃に転じることがこの試合では必要とされていました。そしてそのためにボールを奪うために前線からハイプレスを仕掛けることが重要なカギとなりました。マイボールになる回数が増えればその分自分たちが速い攻撃を仕掛けられる回数も多くなりますからね。
ハリルはそのミッションを遂行するためにインサイドハーフのスタメンに山口蛍と井手口陽介というボールを奪うことを得意としている2人の選手をチョイスしました。山口はそれまでも何度か最終予選では先発していましたが、井手口の先発には少し意外な印象を受けました。そして実際に日本は序盤から自陣のハーフラインより高い位置では、3トップと2人のインサイドハーフを中心にボールを持った相手選手に1人ではなく2人、場合によっては3人ですぐさま囲い込み、なるべく相手に自由を与えないようにし、試合の主導権を握ることに成功しました。
日本の3トップは場合によっては相手GKまでプレスをかけていました。実際GKはポゼッションサッカーをする割にはそれほど足元も巧くなく不安定で、プレスをかけられればボールを大きく蹴り出すことしかできませんでしたね。
試合前のインタビューで長谷部がこう語っているように、最初から選手間でも「速い攻撃・裏を狙う」という意識が統一されていたようですね。
●オーストラリアの3バックはまだ未完成段階で穴も多い。
●よってスピードのある選手をサイドに起用しウイングバックの背後のスペースを狙う定番のやり方が有効である。
●それを実行するためには奪ってから相手の準備が整う前に速い攻撃をすることが重要であり、そのために高い位置からハイプレスを仕掛けることが必要であった。
この3点を踏まえてハリルが選んだのが今回のスタメンでした。そう考えれば確かに今回この11人が選ばれたことにも納得がいきます。浅野が選ばれたことも井手口が選ばれたこともハリルにしっかりとしたこの試合での狙いがあったからでした。そして結果的にこの2人のゴールで日本は勝利を手にすることが出来ました。
さらにこの試合に関していえば交代策も完璧でした。途中から投入された原口と岡崎は投入直後から激しくボールを追い回し、前線からのハイプレスという同じタスクをしっかりこなしていました。2点目は原口のボール奪取から生まれましたしね。久保裕也も短い時間ながら相手の裏を狙うという意識が強く感じられました。
このようにハリルは「今のオーストラリア」をしっかり研究した上で、最も勝利への近道となる戦い方を選択し、見事な結果を残しました。
勝利のポイント②
無策に近かったオーストラリアの日本対策
もう一つの大きな勝利のポイントは、それだけ戦略を練ってこの試合に臨んだ日本に対して、オーストラリアがほぼ無策に近かったことです。
オーストラリアが最近3バックのシステムを始めたことを考えれば、日本がこのような戦い方をしてくることはある程度予想できたはずです。序盤からハイプレスを仕掛け、サイドの裏のスペースを狙ってくることを予想していれば、さらにその裏をかき敢えて中盤を省略し、CFにユリッチを起用しパワープレーで臨んできた方が日本にとってはよっぽど嫌だったはずです。
最初からずっとパワープレーをしなくても、日本の戦い方を見てパワープレー戦術に切り替えることもできたはずですが、なぜかオーストラリアは最後まで中途半端なポゼッションサッカーで試合に臨み、そのおかげで日本は楽に戦うことができました。
この試合を見て一つ思ったことがあります。
オーストラリアの「時代に取り残されるのはイヤだし流行りの3バックもできるようになっておきたい」という気持ちは本当によく分かります。ただ、バルセロナしかり、ユベントスしかり、バイエルンしかり、3バックを高い次元でこなすチームはそもそも3バックはオプションの一つで、対戦チームや試合の展開によっては当然4バックに変更したりします。つまり、3バックというシステムは、そもそも4バックも高いレベルでこなせるという大前提の上でオプションのうちの一つとして取り入れることで初めて意味を持つのです。
なんか言いたいことを言葉にするのは難しいですが…オーストラリアだけに限らず、最近は「流行ってるしとりあえず3バックやってみよう」というチームが多いです。その挑戦意欲は良いことだと思いますが、試合展開によっては途中でも4バックなどの他のシステムに変更することができるような高いレベルを持つチームが使って初めて大きな意味を持つということを忘れてはいけないです。戦術がより高度になってきたこの時代だからこそ、それが大事ですよね。
個人的MVP
この試合の個人的MVPは井手口です。この大一番で先発に大抜擢され見事に先制点を決めた浅野、攻守に貢献した右SBの酒井宏樹も良かったですが、それ以上に井手口のインパクトは大きかったです。山口同様ボールを奪うこともでき、左右へのロングパスもなかなかうまく、そして豊富なスタミナとあれだけ走ったにも関わらず最後にあんなミドルを打てるという勝負強さと力強さ。久々に大物が出てきた感じがあります。そのインパクトはヒデや本田が出てきた時にも勝るとも劣らないです。今後に期待ですね。
あと、井手口のゴールの後スタジアムのスクリーンにリプレイが映し出されて大きな歓声が起きたシーンで「ずーっと映しとけばいいんだよぉっ!ハハッ!」とか意味のわからないことを言ってた松木さんも影のMVPですね。相変わらずでした。
とにもかくにも、日本はこの試合でW杯出場を決めることができたのはあまりにも大きいです。僕もこの試合をスタジアムに観に行って、画面越しではなく肌でこの興奮を感じることができて本当に良かったです。まさか観に行った試合で、今まで最終予選で勝ったことがなかったオーストラリアにこんな内容で完勝し、さらにW杯出場を決めることができるとは思ってもいませんでした。幸せな瞬間でした…。W杯と同じで、W杯出場を決める試合も4年に一回しかないですしね。
W杯出場だけでなく日本はこの試合で色々な大きなものを手にすることができたと思います。それくらい歴史的な試合でした。
では続いて、5日(火)深夜に行われた最終予選最後の試合・アウェーのサウジアラビア戦もサラッと振り返りたいと思います。
以下がスタメンです。
この試合も感じたことを何個か分けながら試合内容に触れていきたいと思います。
●本田はもうとっくに右サイドの選手じゃない
この試合右サイドでは本田が先発しました。もうこの試合を見た日本人全員が思っていることでしょうが、本田は誰がどう考えても右サイドの選手ではありません。しかもそれはミラン在籍時の途中からずっとです。
正直僕は本田圭佑を起用すること自体は別にいいと思います。ただ、起用するとしてもサイドではありません。今の本田は1トップかインサイドハーフの選手だと思います。しかし1トップには大迫という絶対的な存在、そしてインサイドハーフには新星の井手口や柴崎らがいます。つまりもう本田に代表での居場所はなくなりつつあります。
というかそもそもハリルの目指すサッカーではサイドの選手はスピードと裏に抜ける意識が求められます。本田のプレースタイルはその真逆です。ボールを持ってタメを作ることはできますが、スピードは標準以下のレベルですし、裏に抜けようという意識もあまり感じられません。どう考えても本田はハリルが求めるサイドのプレーヤーではありません。これに関しては本田が全て悪いということではありませんが…。
ではなぜハリルはこの試合で本田を起用したのか。おそらくハリルはこの試合を本田の最後のチャンスの場所にしたのではなのでしょうか。今後も本田が代表に招集されることはなくはないですが、ハリルの中ではこの試合がある程度一つの区切りになったのではないかと思います。
そしてこの試合右サイドで起用された本田は特に攻守の連携に絡めることもなく、前半で退きました。まず全体的にこの試合は豪州戦に比べて連携がチグハグで内容が悪かったです。豪州戦から中4日でしかも中東アウェーとは言え、特に見所がなく褒められるべき内容ではありませんでした。これに関しては本田がどうとかいう問題ではありません。
ただ一つ言えるのは、「サイドで使うのならもうわざわざ本田を代表に呼ぶ必要はないのでは?」ということです。
●柴崎・井手口・山口について
この試合先発に抜擢された柴崎は、おそらく連携面もあるのでしょうが、なんだか大人しいというか柴崎らしいプレーはそんなに無かったなあという感じでした。もちろん何個か彼らしいプレーはありましたが、特に前半は近くにいた本田に遠慮してパスを出しているように見受けられるプレーが何度かありました。彼ならもっと前線に際どいパスが狙って出せたと思います。とにかく柴崎は前回も述べたように攻撃面で違いを作れる数少ない中盤の選手ですので、今後のキリンカップの2試合でじっくりと見たいです。
この試合数少ない収穫だったのが、どんな試合でも井手口と山口はある程度計算はできるということでした。2人とも豪州戦ほどではないもののボールを奪う場面やパスカットでピンチを防ぐ場面は幾度かありました。暑さからかパスミスは豪州戦より少し多かったですが、やっぱりどんなシステムや戦い方でもボールを奪える選手というのは必要なんだなと感じました。よっぽどのことがなければこの2人は今後もメンバーに入っていくと思います。
全体的に見てこの試合は中途半端でした。結果論ですが、こんな試合内容になるのなら最初からもっと色んな選手を試してみても良かったと思いますし、本当に勝ちにいってるのか選手を試してるのかなんだか中途半端な印象を受けました。試合前にはスタジオで解説の方がやたら「最終予選で消化試合なんてない」と言っていましたが、僕は別にこの試合を消化試合と割り切ることは悪いことではないと思いますがね。なにがいけないのかはよくわからないです。
あと、この試合は大迫の存在の大きさが顕著になった試合でもありました。豪州戦は大迫が序盤から見事なポストプレーでボールをしっかり納め、攻撃の起点を作っていましたが、大迫のいないこの試合は前線に起点が作れず、攻撃のリズムもかなり悪かったです。大迫は本当に素晴らしい選手ですが、彼がいない時の前線がどうなるのか、一抹の不安も感じました。というか、この試合は岡崎と本田のポジションが逆の方がまだ良かったと思います。
まあ何よりこの試合がW杯を決める試合にならないで良かったと思います。
あと余談ですが、試合後のインタビューで吉田麻也が開口一番「サウジアラビアにおめでとうと言いたい」と言ったことがネットで軽く炎上したらしいですが、僕はそのニュースをみて「はあ?????」と思いました。これのなにがいけないんですかね。
それをみてやっぱりまだ日本では海外のサッカーを観るファンは少ないんだなあと思いました。海外では試合後に相手チームを祝福したり褒めたりすることはごく普通のことですしよくあることです。僕はむしろ開口一番の吉田のこのコメントを聞いて、「ああ、海外でのプレーが長くて発言も自然と海外の選手っぽくなってきてるなあ」と感心しました。
別に海外サッカーを観ている人が偉いとは思わないですし、みんな絶対観た方がいいとも思いませんが、僕は海外サッカーを観ていて良かったと思いました。
しかも吉田のこの試合でのダメだったプレーを結びつけて、「あんなプレーしておいてなにカッコつけてんだ」「まずは反省をしろ」とかいう批判もあったみたいですが、吉田のこの発言とこの試合でのプレー内容はなーんら関係ないです。バカでもわかりますが。
色んなファンがいるのは当たり前ですが、もっと広い目で物事を見られるファンが1人でも増えてくれればいいなと思います。もちろん自分もこれからもっと色々な視点からサッカーを見られるように学んでいきたいです。
この一週間は代表ウィークでしたので、もちろんアジア以外でもW杯予選は行われてました。最後はちょろっとその辺に触れて終わりにしたいと思います。
●ロシアW杯はアルゼンチン、チリ、オランダがいない大会になるかも!?
サッカーファンにはショックなことですが、見出しの通りアルゼンチン・チリ・オランダという誰もが知るW杯常連の強豪国が各大陸のW杯予選で敗退の危機にあります。
まずオランダはW杯欧州予選にて現在グループAで勝ち点差3でスウェーデンに次ぐ3位に甘んじてます。欧州予選では各組1位が本大会出場で各組2位のうち成績上位8チームがプレーオフ進出なのでかなりマズい状況ですね。残り2節ですが、中でも最終節のスウェーデンとの直接対決はかなり熱い試合になりそうです。
オランダは他の欧州の列強国に比べて、世代交代がうまくいっていないのが相変わらずの課題ですね。スナイデル、ロッベン、ファン・ペルシら以降の世代が全く育っていないです。割と好きな国なので頑張って欲しいですね。あとイタリアもスペインと同居したためにプレーオフにまわりそうな感じです。
そしてアルゼンチン・チリも南米予選で苦戦しており、それぞれ5位、6位と低迷しています。南米予選も残り2節、アルゼンチンはこのままの順位なら大陸間プレーオフ、チリはこのままいけば敗退してしまいますが一体どうなってしまうのでしょうか。このままなら前回準優勝チームとコパアメリカ優勝の南米王者がいないW杯になる可能性も十分にあります。残り2節に目が離せないです。
アフリカ予選ではカメルーンやアルジェリアの敗退が決まっており、ガーナも敗退の危機にあるようです。このようにその地域の中で全体のレベルが上がっているのはアジアに限った話ではなく、欧州や南米はアジア以上に厳しい状況になってきています。むしろ日本はまだ恵まれているのかもしれないですね。
●イングランド、相変わらず予選では絶好調
以上です。特に言うことはないです。
●イスコ・アセンシオの2人がスペインを変える!?
今回の代表ウィークでイタリアに3−0、リヒテンシュタインに8−0とそれぞれ快勝したスペインですが、この2試合では特にイスコが別次元の活躍をしていました。イタリア戦は見ましたがやはり天才ですね。さらにそのイタリア戦ではスペイン期待の超新星・アセンシオとも途中まで共演しました。
この2人はレアルでチームメイトですが、これを見てスペインのファンはかつてバルサでチームメイトだったシャビとイニエスタがスペイン代表の黄金期を築いたことを思い出したのではないでしょうか。今後記事のどこかで書くと思いますが、特にアセンシオはレアルの次の顔になれるほどの超逸材です。この2人は偉大な先輩のようなコンビになれるのでしょうか。今後に期待です。
今回はかなり長くなってしまいましたが、この一週間は本当にテンションが上がってオーストラリア戦のニュースを見るたび興奮してしまいました(笑)。W杯出場は決まったため今後は選手間の競争になっていきますが、これまで燻っていたベテランが復活するのか、それとも今までいなかった新星が本大会までにまた現れるのか、来年6月のW杯本大会に向けて今後も日本代表から目が離せないです。