tackieのフットボールブログ⚽️

ライター志望です。サッカーについて感じたことを書きます。プレミア・アーセナル・イングランド代表好きですが、なんでも書きます。

【イラストあり】最近のサッカー用語を楽しく学ぼう!

最近のサッカー界、「知らない言葉が増えてきたなー」

 

そう思うことはありませんか?

 

皆さんご存知の通り、サッカーは「広いピッチでシンプルかつ合計22人の大人数で行われるボールゲームである」という側面から多くの戦術や作戦が存在し、日々進化を遂げながらそれに伴い新しい用語も続々と生まれています。

 

これに関しては仕方のないことなのですが、特に最近のサッカー界(特に戦術面)の様相を理解するにおいて、知っておかなければならない用語がいくつか存在します。

 

今回紹介するのは【3つのゾーン】【5レーン理論】【ハーフスペース】【ニアゾーン】です。

 

サッカーに詳しい人なら知っているでしょうが、サッカーに疎い方、もしくは好きだけど戦術面に関してはそんなに興味ないという方は、ワード自体は記事のタイトルなどで見たことがあったとしても内容まではわからないと思います。

 

しかし、現代のサッカー界をちゃんと理解するにおいてこれらのワードは知っておかなければならない超重要ワードですし、Twitterなどにいるサッカー大好きな方々はこのことについて毎日のように論議してます。

 

そして、現代サッカー界の強豪と言われるチームの多くは、戦術や作戦においてこれらの考え方に基づいたものを採用しています。

   

ちなみに今回の内容は全てこちらの本を参考にして書いています。五百蔵容さんが書かれた『砕かれたハリルホジッチ・プラン』です。*❶

 

ロシアW杯直前に電撃的に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏の戦術や指向するサッカーなどについて掘り下げて考察した本なのですが、それについて知ることができるだけでなく、普通に現代サッカーの流行、新用語の理解のためのバイブルとしても本当に分かりやすくて重宝できる素晴らしい1冊です。

 

また、最近のサッカー用語について説明する上で、どうしてもポジション名を記すことが必要になってきます。特に最近は戦術の高度化に合わせてポジションもどんどん細かくなってきていますが、正式名称で説明するとどうしても長くなってしまうので、詳しい説明に入っていく前に念のためポジションの略称を全て最初に記しておきます。

 

FW…フォワード

MF…ミッドフィールダー

DF…ディフェンダー

GK…ゴールキーパー

 

 

【さらに細かく】

CF…センターフォワード:FWの中でも最前線に位置し最も相手ゴールに近い場所にいる選手。得点を奪うことだけでなく、体を張ってボールをおさめたり、相手DFへのプレッシングの第一歩になったりすることが求められる。背が高くて体が強くてシュートが上手い選手が多い。

 

ST…セカンドトップ:FWの中でもCFより少し下がり目の位置にいて、その周りを動き回る選手。自身での得点だけでなくMFとFWの繋ぎ役やラストパスなどもこなせることなども求められる。スペースを生み出すのが上手い選手が多い。CFに比べて体が小さい選手がやることも多々ある。「トップ下」も近いといえば近い。

 

WG…ウイング:FWの中でも主に4-3-3などの3トップの場合にサイドの高い位置にポジションをとる選手。ドリブルで中に切れ込んでシュートをするのが得意な選手が多い。

 

OMF…オフェンシブミッドフィールダー:MFの中でも特に攻撃的な役割をこなす選手。「トップ下」はこれに近い。

 

DMF…ディフェンシブミッドフィールダー:MFの中でも特に守備的な役割をこなす選手。「アンカー」という言葉がよく使われるが若干これに近い。

 

CH…センターハーフ:MFの中でも特に中盤の真ん中から低い位置にかけてポジショニングする選手。「ボランチ」は最もこれに近い。

 

SH…サイドハーフ:MFの中でも特に外側に位置する選手。イメージ的にはWGより低い位置でWBより高い位置。

 

CB…センターバック:DFの中でも真ん中に位置する選手。体が強くて対人戦が得意な選手が多い。

 

SB…サイドバック:DFの中でも外側に位置する選手。対人戦の強さだけでなく、90分走り抜ける運動量、スピードやテクニック、最近では高い戦術理解能力も求められたりと、現代では難易度の高いポジション。

 

WB…ウイングバック:主に3バックを使用した場合、本来のSBとSHのちょうど間あたりに位置する選手。特に激しい上下運動と豊富な運動量が求められるハードなポジション。

 

f:id:tackie23:20181114141107p:plain

 

f:id:tackie23:20181114141105p:plain

 

さらに細かいポジション名もありますが、とりあえず知っておいたほうがいいぶんだけ書きました。とはいえ、現代サッカーにおいてポジションは「試合開始時の選手の配置」に過ぎず、「このポジションだから絶対こういう役割があるんだ」というのはあまり成立しません。

 

普遍的な役割を持つポジションは今やGKくらいで、1試合の中でOMFとして先発出場した選手が展開やシステム変更によってCHをやったり、SBの選手がWBをやったりすることもしょっちゅうあります。

 

正直言ってポジションなんて「見分けるの大変だからとりあえずこの辺のスペースにいる選手にこういう名前をつけた」てな感じです。

 

説明しておいてこういうことを言うのもアレですが、「こういうもんなんだ」くらいの認識でいてくれるとありがたいです。

 

 

では早速、【3つのゾーン】から説明していきます。

 

 

その①【3つのゾーン】

 

これに関しては実は新用語でもなんでもなく元々サッカー界に昔からある概念なんですが、現在でもよく出てくる重要な基本的ワードなのでこの機会に説明しておきます。

 

皆さんご存知の通り、サッカーのピッチはすごく広いです。スタジアムによって細かい差はあれど、縦105m・横68mぐらい(FIFA規定)が基本的な広さです。

 

これだけ広いので、作戦・戦術を考えるにおいて、いくつかのゾーンやエリアに分けて考えることが有効な手段となってきます。その理由はいくつかありますが、

 

・自分がいるべき、みるべきエリアが理解しやすい

・他の選手が主にどこにいるのかを把握しやすい

・攻撃時に「どのエリアが有効なスペース」なのか、守備時に「どのエリアが危険なスペースなのか」などをチーム全体で共通理解する上で役立つ

 

などどれも重要なことです。

 

そしてこの「広いピッチをいくつかのエリア・ゾーンに分ける」ということが今回の新用語の理解において重要な大前提となります。

 

そして今回紹介する3つのゾーンというのはピッチを横に3分割にして後ろ真ん中の3つのエリアに分けたものです。

 

そしてこの3つのゾーンにはそれぞれ以下のような特色があります。

 

〔後ろ〕→自分たちが守らなければいけないゾーン。GK・DFの選手は主にココに配置される。

 

〔真ん中〕→主にMFの選手が多く配置される真ん中のゾーン。サッカーのスポーツとしての特色上、このエリアに最も多く人が集まりやすく、ボールの奪い合いが激しく行われる重要なゾーンである。

 

〔前〕→自分たちが攻めなければならないゾーン。FWの選手は主にココに配置される。

 

そしてこの3つにはそれぞれカタカナで名前がつけられています。

 

f:id:tackie23:20181024092243p:plain

 

これは正直画像を見ていただければすぐわかると思います。この画像で言うと、自分たちのチームが向かって左から右に攻める(左側のゴールを守っている)場合、この3つのゾーンはそれぞれこのような呼び方になります。

 

反対に右から左に攻めるチームにとっては、向かって右側がディフェンディングゾーン(自分たちの陣地)、左側がアタッキングゾーン(相手の陣地)となるのです。

 

この呼び方のパターンはいくつかあり、

 

ディフェンディングサードミドルサードアタッキングサード

 

ディフェンシブゾーン・ミドルゾーン・オフェンシブゾーン

 

など、媒体や人によって様々です。今回は画像にあるディフェンディングゾーン・ミドルゾーン・アタッキングゾーンの3つで呼ぶことにします。

 

サッカーにはある意味、【陣取り合戦】のような側面があり、90分を通して自分たちが主に守るゾーン(ディフェンディングゾーン)に相手から侵入される回数が増えればそれだけピンチの数も増えるので、なるべくそれを阻止しなければなりません。

 

そして逆に、勝つためには相手にとってのディフェンディングゾーン、つまり自分たちから見たアタッキングゾーンになるべく多く侵入する回数を増やさなければなりません。

 

そしてその上で、【ミドルゾーンの支配】【ミドルゾーンで主導権を奪うこと】が非常に重要なカギになる、というワケです。

 

相手に自分の陣地に侵入されないようにし

 

反対に相手の陣地に侵入する回数を増やす

 

そして、その2つのために真ん中の陣地での主導権を握る(*最重要)

 

戦術や作戦とは、基本的にこの3つの目的を遂行するために考えられます。

 

そして前述の通り、その中でも最も重要なのが【ミドルゾーンの支配です。

 

試合の中継で解説の方が「今は日本がよくミドルゾーンでボールを奪えているので〜」「今はミドルゾーンでの主導権を相手に握られているので我慢の時間帯ですね〜」などとおっしゃているのを何度か聞いたことがあると思います。

 

それはつまり、中盤でボールをたくさん奪われていたり、逆によく奪えたりしている。もしくはたくさん人数をかけられていたり、逆にこっちがかけている。…などして、どちらが試合を優勢に進めているかを中盤での攻防を通して視聴者に説明するときにこういう風に表現して伝えているのです。

 

ちなみになぜミドルゾーンにこれだけ人数が集まりやすいかと言うと、それはサッカーのフォーメーションやシステムの特徴にも大きく関わっています。

 

以下のフォーメーションを皆さん一度は目にしたことがあると思います。サッカーにおいて最もオーソドックスなシステムである4−4−2、3バックを用いた際に多い3−5−2のシステムです。

 

f:id:tackie23:20181024092441p:plain

 

f:id:tackie23:20181024092525p:plain

 

一目見たらわかりますが、どちらも中盤に多くの人数がかけられています。基本的にフォーメーションを決める時点で、サッカーは中盤に最も人が集まりやすい特性を持っています。

 

さらに試合の流れの中においても、中盤に人数をかけて試合の流れを支配するやり方は、最も勝利に近づきやすい方法のうちの1つです。

 

ただ1つ言っておきたいのは、決してディフェンディングゾーンに常に必ずDFがいる、ミドルゾーンに常に必ずMFがいる、アタッキングゾーンに常に必ずFWがいるというわけではなく、あくまで「そのゾーンにそのポジションの選手が集まりやすい」という目安のようなもんということです。

 

それこそシステムや戦術、その時の状況にもよりますが、アタッキングゾーンにMFがいたり、ディフェンディングゾーンにFWがいたりすることももちろんあります。そしてその多様性と自由度がサッカーの面白いトコロでもあります。

 

3つのゾーンに関してザックリ説明しました。正直もっと色んな見方も出来ますし、掘り下げようと思えばいくらでも掘り下げられますが、最低限理解しておいた方がいいことは書いたつもりです。

 

ただ、「なぜ真ん中のエリアに人が集まりやすいのか」とか「なぜ自分たちの陣地に侵入される回数が多いと危険なのか」というだいたいの浅い部分はわかっていただけたと思います。

 

次はもっと細かい話です!

 

 

その②【5レーン理論】&【ハーフスペース】

 

これが今回の内容のキモで、さっきの【3つのゾーン】はウォーミングアップのようなものです。

 

そしてこの2つの言葉が最近のサッカーにおける流行というか1つの潮流のようなもので、最近のサッカーの戦術の流れを理解するにおいては必須とも言える知識です。

 

さっきはピッチを横に分けましたが、今回の【5レーン理論】&【ハーフスペース】ピッチを縦に分けた場合の話です。

 

ピッチを縦に分けることは、そのチームの戦術・作戦において、

 

「チームとしてどのスペースが危険で、どのスペースから攻めれば効率が良いのかを共有できる」

 

そしてそれぞれのポジションの選手が、「自分がどのスペースをみるべきなのか、他の選手が主にどこにいるのかを認知しやすい」

 

という意味合いがあります。

 

そのためこのピッチの縦分割というのは、戦術・作戦を練るにおいて必要不可欠な考え方の1つでもあるのです。

 

まずは【5レーン理論】にたどり着く前に順を追っていくつかのピッチの縦の分け方について説明します。

 

 

▼3レーンの考え方

 

サッカーのピッチを縦に分けた場合、まず1番シンプルでわかりやすいのはサイドと中央に分けた3レーンの考え方です。

 

f:id:tackie23:20181024102232p:plain

 

これは普遍的な事実ですが、サッカーは真ん中から攻めた方が確実にゴールに近いです。そのため大原則として、守備はサイドに追い込むのが基本ですし、反対に攻撃は可能なら真ん中から攻めるに越したことはありません。その方がより早くゴールに辿り着きます。

 

しかしそのような事実があるため、もちろんどのチームも真ん中に人をより多く集め強固にします。先ほど紹介したフォーメーションを見ればわかると思いますが、これはどんな戦術をとるにしても基本的に変わらない事実です。

 

そして攻める側はもちろん真ん中が固いため、一度サイドにふったり、ポジションチェンジを繰り返したりするなどして、真ん中にスペースを生み出しそこに攻め手を見つけ出したりします。

 

中央よりサイドでのドリブル突破のシーンの方が多いのは、極端な言い方ですが、サッカーにある意味「サイドは捨てている」という側面があるからですね。

 

そしてこれも現代では必ずしも「そうだ」とは言えませんが、役割や特徴の面から見ても、サイドには90分を通して激しい上下運動が出来てスピードがありドリブルも出来るアスリートタイプの選手、真ん中には身体が強くかつボールをさばくことが出来て判断力と視野の広さに優れたサッカーIQの高いタイプの選手を置くことが多いです。

 

まあでもやっぱりこれはどんなポジションの選手にもより多くの能力が求められる現代サッカーではあまり関係ないですね。昔からこういう傾向があるというくらいの認識でいいと思います。

 

このように最もざっくりピッチを縦に分けた場合、「真ん中」と「サイド」という2つのエリアが、色んな側面から全く異なる特色を持つ2つのものとして見えてくると思います。

 

上の画像では、それを「中央レーン」「サイドレーン」という言い方で2つに分けました。これが最も基本的な分け方だと考えて下さい。

 

 

▼4レーンの考え方

 

しかしこれだけの分け方では戦術や作戦を考える上でまだまだザックリしすぎな面があります。

 

そこでもう1つ、中央レーンをさらに半分に分けて考えた4レーン理論の登場です。

 

f:id:tackie23:20181024102525p:plain

 

なぜこの考え方が広く普及したかというと、これがサッカーにおける最も基本的な守備戦術の1つである4バックのゾーンディフェンスにピッタリと当てはまるからです。

 

*サッカーにおける守備の形には大きく分けると2つあり、それぞれを超ザックリ説明すると、

 

「ゾーンディフェンス」…人につくのではなく自分の任せられたスペースをみる、ボール(の動き)を基準にした守り方。移動距離は短くなるが、細かいマークの受け渡しやチーム全員のルールの共通理解、それに伴ったポジションの微調整やカバーリングなどが重要となる。

 

「マンツーマンディフェンス」…一人一人が決まった相手をみる、人を基準にした守り方。ゾーンより理解しやすいシンプルな守り方だが、個人の戦い(1対1)の勝敗に依存してしまう傾向がある。現代サッカーでは完全なマンツーマンディフェンスはあまりみられない。

 

例えとして、最も代表的かつ基本的な4バックのシステム1つである「4−4−2」にこの4レーン理論を当てはめてみます。

 

f:id:tackie23:20181024102627p:plain

 

すると見事にピッタリ当てはまり、「誰がどこにいるのか、誰がどこのスペースをみればいいのか」「チームとしてどこに使われやすい、もしくは使いやすいスペースがあるのか」などが非常に分かりやすく、これを元に戦術や作戦を考えると一気にチーム及び個人に落とし込みやすくなります。

 

もちろん4バック以外にもサッカーにはいくつかのシステムがありますが、今でも最も多くのチームが採用しているのがこの4バックのシステム(4−4−2・4−2−3−1・4−3−3etc…)なので、この4レーン理論が広く普及したワケです。

 

しかし一方、攻撃時のことを考えると、この理論のまま当てはめた場合どうしても行き詰まってしまいます。

 

なぜならば、相手も同じように4レーン理論などを用いてピッチを区分して戦術や作戦を考えているわけで、自分や他の選手がどこのスペースにいるかをキッチリ把握しながら連携をとりつつ試合を進めていくからです。

 

工夫のない攻めでは簡単にスペースを消され狭いサイドに追い込まれ、あっさりボールを奪われて攻め返されてしまいます。

 

これらの状況を打破するためにペップ・グアルディオラによって新たに提唱されたのが、次に紹介する【5レーン理論】及び【ハーフスペース】です。

 

 

▼5レーン理論&ハーフスペース

 

先ほど述べた通り、4レーンのままだとどうしても攻撃が行き詰まってしまう。そこで中央レーンとサイドレーンの間に新たな仮想のレーンを引き、中央でもサイドでもない、新たなスペースを認知することで有効な攻撃を仕掛けることがサッカー界の新トレンドになり始めました。

 

f:id:tackie23:20181024102814p:plain

 

それが5レーン理論です。こちらの画像を見ていただければわかると思いますが、中央レーンとサイドレーンの間に新たなレーン(中央レーンの両端の線と点線で囲まれたエリア)が設定され、中央レーンと両側のサイドレーンを含めた合計5つのレーンが出来上がりました。

 

この5レーン理論は、2014年当時ドイツの強豪、バイエルン・ミュンヘンを率いていたペップ・グアルディオラによって初めて戦術の中に効果的に用いられ、現在では新たな流行の1つとなっています。

 

f:id:tackie23:20181024102842p:plain

 

そしてこの5つのレーンの設定によって中央レーンとサイドレーンの間に新たに生まれるスペースは「ハーフスペース」と呼ばれるようになりました。

 

現代のサッカーでこのハーフスペースをいかにウマく使うかは、攻撃側における一つの大きなテーマとなっていますが、その理由をいくつか説明していきます。

 

 

1.プレッシャーの少ないエリアであること

 

f:id:tackie23:20181024103021p:plain

 

まずこのように、例えば4−4−2にこの5レーン理論を当てはめると、ハーフスペースは比較的プレッシャーの少ないエリアであることがわかります。

 

中央はもちろんなんども述べた通り最も重要なので多くの選手を配置し固めてきます。そしてサイドにも選手は何人かいます。しかしこの2つの間の絶妙なスペースは、サッカーのシステムの構造上、自然と浮いたスペースになりやすいのです。

 

f:id:tackie23:20181024103138p:plain

 

これは同じ4バックの4−2−3−1ですが、他のシステムでも同様のことが言えます。

 

このエリアに侵入してボールを受けることにより、すぐに激しいプレッシャーを受けることなく、次のプレーをすることができます。

 

 

2.相手に強制的に選択を迫ることができること

 

もう1つの攻撃側がハーフスペースを使うことの利点は、相手に強制的に選択を迫ることができる点です。

 

f:id:tackie23:20181024103258p:plain

 

守備側が4レーン理論に沿ってそれぞれの選手がしっかりそれぞれのスペースを見ている場合、攻撃側のボールを持っている選手ないし持っていない選手にハーフスペースに侵入されると、一瞬「誰がみるべきなのか」という選択に迫られてしまいます。

 

f:id:tackie23:20181024103400p:plain

 

そこで近くにいる1人の選手がいったとしても、その選手がいた場所には確実にスペースが空きますよね。攻撃側がハーフスペースを活用することの最大の目的の一つは、この空いたスペースを使うことです。

 

また、守備側が瞬時にその空いたスペースを他の選手のポジションチェンジによって埋めたとしても、またそこには新たなスペースが生まれます。またそこを埋めて、そのあとも埋めて…と守備側は全体の移動を繰り返すことになるのですが、この瞬時に生まれるズレを使うことこそがハーフスペースの活用の最大の利点なのです。

 

おそらく今までもずっとこの「間のスペース」は使われていたのでしょうが、ペップが初めて明確に言語化して戦術に落とし込んだため、一躍現代のスタンダードの一つとなりました。

 

そして同時に守備側にとっても、「いかにハーフスペースを有効活用されないような守備戦術ができるか」が大きなトレンドの一つになったワケです。

 

広いピッチで22人の選手が一度にプレーするサッカーにおいて、

 

攻撃側の普遍のテーマの一つは、「いかに使えるスペースを見つけ出す(生み出す)か」

 

守備側の普遍のテーマの一つは、「いかに相手に使われるスペースを与えないか」

 

ということです。そう考えると、この【5レーン理論】&【ハーフスペース】は最近定着したようで昔から変わらぬテーマであったとも言えるかもしれません。

 

 

中々内容の濃い説明でしたが、理解できましたでしょうか!次は最後のポジショナルプレーです。

 

 

…とその前にブレークタイム!

 

さらに知って欲しい最近よく出てくるようになったサッカー用語をちょろっといくつかカンタンに紹介します!本当にすぐ説明できるやつです!

 

ポジティブ・トランジション(ポジトラ)…サッカーの試合中における、守備→攻撃に転じる切り替えのこと。

 

ネガティブ・トランジション(ネガトラ)…反対に、攻撃→守備に転じる切り替えのこと。

 

インテンシティ…直訳すると「強度」。サッカーにおける色んな事象に対して使われるが、主には試合中のチーム全体のボールへのプレッシャーの速さや頻度、その激しさや強さが対象である。ポジトラ・ネガトラ共にすばやく、ボールを持った敵へのプレッシャーが強くかつ速い、そしてそれを試合全体を通して同じ強度で何度も続けられるチームに対して「インテンシティが高い」と言ったりする。単純に「フィジカルが強い」とはまた異なる。ハリルホジッチはこういうチームを目指していた。

 

これらを知っているだけでまた少しサッカー観戦が楽しくなりますよ〜♫

 

では続きに進みます!

 

 

その③【ニアゾーン】

 

これも正直5レーン理論とハーフスペースのところでついでに説明しても良かったのですが、それだとその項目が長くなりそうなので分けて説明します。

 

f:id:tackie23:20181114113311p:plain

 

ただただシンプルに画像で説明すれば、この黄色いエリアが「ニアゾーン」です。

 

これももちろん元々サッカー界には昔からあった考え方なのですが、5レーン理論とハーフスペースが脚光を浴びるようになって改めて強調されることが多くなりました。

 

なぜならば、ニアゾーンはハーフスペースの延長線上、ゴールに近い位置にあるスペースだからです。

 

そもそも4バックのシステムだとどうしても急所になりやすいのが、「CBとSBの間のスペース」です。

 

チームの方針やシステムによって違うこともありますが、自陣のディフェンディングゾーンに攻め込まれた時、基本的にCBはなるべくゴールの目の前にいたいと思っているはずです。そしてサイドで相手選手がボールを持っている場合、SBの選手がどうしてもそっちの方に釣り出されてしまいます。

 

f:id:tackie23:20181114144549p:plain

 

その釣り出された時に空いたスペースを使うことが攻撃側にとっては崩しの一つの形となるのです。

 

最も有効な侵入の仕方は、OMFやCHなどがバイタル手前付近からナナメに走り込み、DFの死角から侵入する方法です。DFにとって「見えない場所からスペースに走り込まれる」というのは最も決定的であり最もイヤな侵入のされ方の一つです。

 

近くのCBがその選手に対応しにニアゾーンに行けば、最も危険なゴール前がガラ空きになります。かと言ってバイタル手前でその走り込む敵選手を見ていたDMFやCHがそのままそこについて言った場合、バイタル手前がガラ空きになり、新たに生まれたそのスペースに侵入してきた選手にミドルシュートを打たれてしまいます。

 

このように、5レーン理論&ハーフスペースという概念が明確に世に出てきてから、この【ニアゾーンの攻略】が攻撃側にとっても守備側にとっても試合を支配する上での大きなテーマの一つとなりました。

 

 

以上で終わりです。今回紹介した用語は全て元々サッカー界には昔からあった考え方や概念であり、それをオモテに引っ張り出して言語化しただけの話です。

 

ペップも今や革命家として崇められていますが、彼の考え方や信条は様々な選手や指導者の影響を受けてきたものでもあります。

 

ではなぜ今こうやって言語化することが増えているかというと、それだけサッカー界を取り巻く事情が複雑になってきているということです。

 

とんでもなく強いチームが現れ、それを倒すためにまた新たな革命を起こすチームが現れる…こういった流れがサッカー界の日々の進化を支えてきました。

 

この流れは昔からずっとありましたが、現代ではその一連の流れのレベルがどんどん上がってきており、指導者側もそれに即して日々新たな情報をインプットして選手たちに伝えていかなければなりません。

 

曖昧な伝え方をすると選手も混乱していしまいますし、より具体的である方が実行に移しやすいのはサッカーに限らず多くのことに言える事実です。

 

決して「絶対に言語化したほうがいい!」というワケではありませんが、物事を抽象的に伝えるほうが結局難しくなってしまうのではないかと思います。

 

そしてコレがまた大事なことですが、今の時代、最先端のサッカー事情は指導者→選手に伝える流れ、これだけにはとどまりません。

 

観る側、つまりサポーターや視聴者もこの複雑に絡まるサッカー界の様相を理解したいと思うワケです。そして観る側がそうやって新たな情報を取り入れていくことは、間接的にその国全体のサッカーのレベルが上がることに繋がると思います。

 

 

 

 

 

【〜今回のまとめ〜】

 

●戦術や作戦をチーム及び個人に落とし込むにおいて、ピッチをいくつかのエリアやゾーンに分けて考えることは非常に有効な手段であり昔から行われていた

 

●現代サッカー界では日々の進化に伴い、新たに生まれた考え方や今までもあった概念を言語化することが増えてきたが、それを理解したいと思っているのは選手や指導者だけではない

 

ハリルホジッチは特徴のある顔なので描きやすい

 

 

 

 

 

〔参考文献〕

  

*❶ 五百蔵容(2018)『砕かれたハリルホジッチ・プラン』星海社

 

*❷  ポジショナルプレー、これが決定版。グアルディオラに直接聞いてみた。 - 海外サッカー - Number Web - ナンバー