tackieのフットボールブログ⚽️

ライター志望です。サッカーについて感じたことを書きます。プレミア・アーセナル・イングランド代表好きですが、なんでも書きます。

イニエスタの獲得が今までの助っ人スター選手と違うワケ

ここ最近日本のメディアを賑わせているニュース。

 

森計問題、日大アメフトタックル事件、そしてイニエスタ

 

5月24日木曜日、楽天・三木谷社長が会見を開き、大方の予想通り、スペイン代表アンドレス・イニエスタバルセロナからヴィッセル神戸に移籍することが発表された。

 

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このニュースに関する噂が列島を駆け巡った時、チラホラと「嬉しいけどイニエスタみたいな選手がJリーグに来て大丈夫なのか」「可哀想」「周りの選手とレベルが合わずにストレスが溜まるのではないか」という声が僕の周りでも聞こえてきた。

 

気持ちはわかるが、僕はこれらの不安はおよそ見当違いだと思う。

 

なぜなら、イニエスタに求められる役割は今までのJリーグに来たスター選手達とは全くもって異なるからだ。

 

例えば、ネイマールレヴァンドフスキが来るのならそれらの心配をするのはよくわかる。

 

彼らはまさに、「自分がゴールをとりたい」タイプで、周りが自分の思うようにいかなければ多少フラストレーションも溜まるだろう。そして勿論、こちらもその役割を期待して迎え入れる。

 

しかし僕らがイニエスタに期待するのは「ゴールやアシスト」ではない。

 

勿論それも期待することの一つだが、僕らがイニエスタに期待することは今までJリーグに来た助っ人外国人スター選手達のそれとは大きく異なる。

 

ここで先に言っておきたいのは、この言葉の意味が決してポドルスキフォルランイニエスタより能力的に劣るとかそういう意味ではない。

 

では一体僕らがイニエスタに期待することはなんなのか。今回はイニエスタがどんな選手かについて触れながら、それについて考えていく。

 

 

●プレースタイルや性格の面からみたイニエスタ獲得のメリット

 

日本に今まで来た外国人スター選手といえば誰が思い浮かぶだろうか。かつて90年代に海外からのスター選手の来訪がピークを迎え、その時はレオナルドやゲーリー・リネカーパトリック・エムボマやさらにはジーコまでもが日本にやって来てプレーした。

 

最近ではフレドリック・リュングベリディエゴ・フォルラン、そして現在もヴィッセル神戸でプレーするルーカス・ポドルスキらが記憶に新しい。

 

そのほとんどは攻撃面で違いを生める選手、いわゆる「ゴールやアシスト」という目に見える結果を残し、チームの勝利に直接貢献できるようなスター選手ばかりだった。

 

なぜJの多くのチームがそういうスター選手ばかりを獲得するかというと、「魅力がわかりやすい」からだ。ゴールやアシストなどの目に見える結果を残せる選手の獲得は、スタジアムの盛り上がりや観客の増加に直接的に繋がる。

 

先ほど述べたように、例えばネイマールJリーグに来るとしたら、冒頭で挙げたような心配をする必要があるだろう。

 

しかしみなさんご存知のように、そもそもイニエスタは「自分がゴールを決めて目立ちたい」と思うような選手ではない。

 

もちろん記憶に残るスーパーゴールは沢山あるが、イニエスタは高度な戦術眼と高いサッカーIQを生かし、与えられたタスクを確実にこなしながら、周りを生かしつつ自分も輝けることを最大の武器にした選手だ。

 

「周りのレベルが違ってイライラしないだろうか」などの心配がそもそも見当違いで、彼であれば、周りのレベルに合わせて自分ができること・自分に与えられた役割やタスクを確実にこなし、周りがやりやすいようにいわゆるお手本のようなプレーをしてくれるはずである。

 

さらにいえば、性格的にもどちらかというと控えめでおとなしい性格だ。少々のことでイライラしてチーム内で不和を生じさせることなどないだろう。

 

だから、そもそもイニエスタに関しては、従来のJにやって来たスター選手達と違い、

 

「ゴールやアシスト」などの目に見える結果を残すこと(そしてチームを勝利に導くこと)=成功

 

ではない。その次元を超えた、ピッチ上だけには収まらない多くの役割が彼には期待されている。

 

ではそのピッチ上に収まらない役割とはなんなのか。

 

 

●ピッチ上だけには収まらない獲得のメリット

 

 

バルセロナというメガクラブのDNAの還元

 

イニエスタの他の選手と違う部分の一つとして、バルセロナという世界でも特異なクラブのDNAが刻まれている選手であるという点が挙げられる。

 

今回の会見で三木谷社長がバルセロナの「カンテラ」と呼ばれる下部組織について触れていたが、イニエスタは世界中に存在する現役のバルセロナ出身の選手の中でもその素晴らしくてハイレベルなサッカーのDNAを最も体現している選手であると言える。

 

それは多くのサッカー識者が発言しているため言わずもがなだろう。かつてシャビと共にバルセロナの難解な中盤を構築し、多くの選手や監督から「サッカーの天才」と称されたイニエスタはもはや「生けるバルセロナの教科書」とも言える。

 

リオネル・メッシセルヒオ・ブスケツも勿論それに値する選手だ。しかし我々が想像もつかないレベルのサッカーIQを持つイニエスタこそ、多くの人が言うようにバルサイズムを最も体現する選手であろう。

 

そんな選手が「キャリア二つ目のクラブ」として日本を選んでくれたのだからこれはとんでもないことである。

 

勿論ピッチ上でもそのバルサのDNAを体現してくれるであろうし、さらには言葉や振る舞いの一つ一つからも共にプレーする選手や観に来た観客は多くの刺激を受けるだろう。

 

なぜなら、約20年このバルサという世界屈指のチームでプレーしてきたのだ。そのDNAは本人も意識しないレベルで刻み込まれており、そこから発せられるプレーや言葉から学ぶことは多いはずだ。

 

今まで画面越しに観ていたそんな選手が直に見られる、それによる好影響がないとは考えにくいだろう。

 

 

・その特筆したスター性によるブランド力の向上

 

イニエスタの今までの助っ人選手との違いにはもう一つ、「圧倒的すぎるスター性」がある。

 

もちろん今までJリーグにやって来た海外のスター選手たちも素晴らしいし、歴史に残るプレイヤー達ばかりだ。

 

しかし、かつて世界最強と謳われたバルセロナとスペイン代表の全盛期のド真ん中で長きに渡り不動の主力としてプレーし、かつCLやW杯などの世界的なタイトルをいくつも獲得した男だ。

 

その現代サッカー最高峰と言われる頭脳と技術を持つスーパースターの来訪は、今までのJの歴史の中でも最大級の出来事と言わざるを得ない。

 

しかもその34歳という年齢はプレースタイル的にもそれほど障壁とはならない。なんなら今季のリーグ戦でも通常どおり主力としてシーズン通して出場し、来月開幕のロシアW杯のスペイン代表メンバーにもしっかり選ばれた。

 

まさに選手としてトップレベルに近い状態を維持しながらの日本挑戦となるのだ。それだけあって、その挑戦に対する海外からの注目も勿論大きい。

 

90年代のJリーグになくて今あるものは「DAZN」を筆頭にした配信という形のサッカー観戦だ。

 

世界中のあらゆる場所で、スマートフォンタブレット一つで世界のスーパースターのプレーを目にすることができる。

 

現在DAZNによる莫大な放映権料により、Jリーグはさらなる進化の時を迎えている。

 

おそらく日本に活躍の場を移したスーパースターの活躍を見たいという海外のファンも多いはずで、イニエスタが来たことでJリーグの注目度は大きく上がるだろう。そして今後さらに多くの国や地域でイニエスタのプレーが片手一つで見られるようになる可能性がある。

 

そうなれば、「ヴィッセル神戸」そして「Rakuten」の名前は現在よりさらに世界的に広まるはずだ。事実、今回のイニエスタの移籍で、「ヴィッセル神戸」が海外で名の知れたJリーグのクラブのトップに躍り出たと言っても過言でないだろう。

 

しかし楽天の三木谷社長にとってはイニエスタポドルスキの獲得は始まりに過ぎない。

 

イニエスタレベルの選手が来れば、「彼と一緒にプレーしたい」と思って今後国内外から多くの有力選手がJリーグ、および神戸にやって来る可能性がある。そうなれば、Jリーグや神戸のレベルが現在より上がっていくことは容易に考えられる。

 

実際にアメリカのMLSは、デイヴィッド・ベッカムがやって来たことをきっかけに、立て続けに多くのスター選手が集まり始めた。

 

三木谷社長は、ヴィッセル神戸を国内でも力のあるクラブに成長させ、いずれアジアのみならず世界でも名の知れたクラブにしていき、そしてヴィッセル神戸および楽天のブランド力を上げることを最終的な展望としているはずだ。

 

 

これほどまでに多くの影響が見込まれるスターの加入は今までになかった。

 

バルセロナというチームで受け継がれてきたことを様々な形で教授してくれる上に、クラブのみならずJリーグ全体のブランド力の向上にも影響を及ぼす。三木谷社長の展望を現実のものにする上でイニエスタという選択はまさにピッタリの人選と言える。

 

そしてそのイニエスタのために信じられない額の年棒を惜しむことなく支払う三木谷社長がどれだけこの計画に本気なのかがわかるし、多くのスター選手の中からイニエスタを選んだその決断もさすがと言える。

 

そしてさらに強調すべきなのは、イニエスタ自身がその自分に課せられた多くの役割を理解しているということだろう。会見で、「三木谷社長が話したヴィッセル神戸の今後の展望に興味を持った」と述べていたところからもそれが見てとれる。一般的にサッカーIQの高い選手はそれ以外の面でも賢いことが多い。

 

アンドレス・イニエスタの獲得」というのは単なるスター選手の移籍ではない。これからの日本のサッカー文化においてこの5月24日が重要な1ページになり得る可能性は十分にあるのだ。

 

願わくば、引退した後も何かしらの形で日本サッカーに関わってくれれば最高だ。そうすれば、さらなる日本サッカーのレベルの向上が見込めるだろう。

 

今回のニュースを見て「イニエスタJリーグに来て大丈夫なのか」などと思ったサッカー関係者はおそらくいないだろう。

 

その心配は、今後イニエスタがピッチ内外で魅せてくれる日本サッカーへの貢献で、杞憂であったことがわかるはずだ。

 

なぜなら、イニエスタはそれだけ世界でも指折りのスーパースターで、サッカーの歴史上においても特別な存在であるからだ。

 

余計な心配などせず、イニエスタと日本サッカーがこれから紡いでいくストーリーをワクワクしながら待っておくことが今の僕らに唯一できることだ。