「FFP」とは?/サッカー界を変える新ルールは本当に意味があるのか(後編)
前編に引き続きFFPの話です。
前編はこちら↓
・FFPの問題点(PSGの例)
PSG(パリ・サンジェルマン)は今夏、まず2億2000万ユーロ(約290億円)という意味のわからない金額でバルセロナからネイマールを獲得しました。もちろんこの移籍金で世界最高額は更新されました。
そしてさらに世界中を驚かせたのが、移籍市場閉幕間際にモナコのキリアン・ムバッペを1億8000万ユーロ(約236億円)というこれまた天文学的な金額で獲得したことでした。
ネイマールといえばもはや説明不要のスーパースターであり、バルセロナでこれから歴史を築いていくと考えられていたので、世界中が驚く移籍でかなり話題になりました。
ムバッペは昨季モナコで大ブレイクを果たし、今や若手No. 1と言われる驚異の18歳であり、ヨーロッパ中のビッグクラブが狙う超人気銘柄でした。
この2人が同時期に莫大な移籍金で加入するということで、このビッグディールは今夏で一番話題の移籍となり、そしてもちろん「PSGはFFP大丈夫なのか!?」という話になりました。
ここからが「抜け道」についての話になるのですが、FFPへの抵触を避けるため、PSGはムバッペを1年間のレンタル移籍という形で獲得し、来シーズンに236億円を支払って買い取りオプションを行使すると発表しました。
つまり、「今シーズンからチームの一員になるけど、この1年はまだモナコから借りてるという状態で、移籍金は来夏に支払うから236億円は来シーズンの経費に計上してね〜♪」ということです。
このやり方自体はルール違反ではありませんが、「より早く多くのスター選手を獲得したいけどFFPへの抵触は回避したい」という魂胆がミエミエです。
そしてなにより18歳の若手選手にこの移籍金は余りに高額すぎます。移籍市場に価格破壊を起こしたと言っても過言ではありません。
もちろんムバッペは超有望株であり、今後この移籍金を回収するほどの活躍をする可能性は十分あります。しかし先行投資なら自チームの下部組織のために育成環境にお金を使う方法だって十分有効ですし、それならFFPにも引っかかりません。
同じく今夏にムバッペを狙っていたバルセロナとレアル・マドリーが訴えかけたこともあり、UEFAは直後からこの移籍について調査を始めることを発表しました。よって、今後PSGに何らかのペナルティが与えられる可能性があります。
PSGは2011年にカタールの王族と関わる投資グループの人物が会長に就任し、そのあたりから毎シーズン移籍市場に大金を投じ多くのスター選手を獲得するようになり、徐々に力をつけていきます。
UEFAのルールとして、営業収入に関しては金満オーナーの息がかかった関連企業によるスポンサー契約などにおいて、市場価値を明らかに逸脱する超高額の契約が結ばれることは原則として禁止されています。※参照2より一部抜粋
このスポンサー契約による収入もFFPへの抜け道の一つとなっており、PSGはその部分でもかなり怪しいです。グレーです。
同じく中東系の「エティハド航空」と巨額の契約を結び、推定4億ポンド(約680億円)と言われる莫大なスポンサー料とスタジアム命名権料を手にしたマンチェスター・シティも同様です。
エティハド航空はアブダビ政府が100%株式を所有する企業であり、シティのマンスールオーナーはそのアブダビ王族の1人です。この部分でもオーナーとエティハド航空の関係性を指摘する声は上がっています。※参照1より一部抜粋
このようにこの2つのチームには共通の抜け道があり、それぞれFFPに抵触してるのではないかと疑問を持たれています。
以上のように、FFPはこれからのサッカー界の情勢を変える重要なルール改正でありながら、その抜け道もいくつかあり、一部ではすでに「FFPは意味をなしてないのではないか」という声も上がっています。
・FFPについて思うこと
今夏のPSGの一連の移籍騒動に関して、コメントを求められたモウリーニョが、「ネイマールに290億円が支払われたことはさほど問題ではなく、彼はそれだけの価値がある。問題なのはムバッペのような選手に巨額の移籍金が支払われるということだ。」みたいなことを言っていました。
僕はまさにこれと全く同じ意見です。モウリーニョ素晴らしいです。
正直ネイマールに関してはこれぐらいの移籍金でもおかしくなく、というよりかむしろネイマールレベルの選手は「どれぐらいの移籍金か」という問題ではないと思います。もはやお金で計れる価値ではありません。
今回ほどの移籍金でも彼であれば、確実にそれ以上の付加価値をクラブに与えてくれるはずですし、ネイマールはそれほどのスーパースターです。極端に言えば移籍金が5000億円でも1兆円でも関係ないと思います。どんな金額であっても彼はそれくらいの価値があります。
ただ、それほどのレベルに達している選手は世界でも数えるほどしかいなく、現代のサッカー界ではメッシ、クリスティアーノ・ロナウド、ネイマールの3人のみだと僕は考えます。彼らであればどんな移籍金でもそれ以上の価値がありますし、290億円とか払われても問題はないです。
問題なのはムバッペのような選手に今回のような移籍金が支払われることです。そうなれば移籍市場の全体の基準が上がってしまう危険性もあります。ましてや彼はまだ18歳の選手でこれからどうなるかなんて誰も予想できません。もちろん才能のある選手ですが。
他のクラブチームが「彼レベルにも236億円ほどの移籍金が支払われるのか」と認識することで、これ以降それに近い額がそれ以上の額を払わないとムバッペレベルの選手でも獲得できない可能性への焦りが生まれてきます。
先ほど述べたたように今回の移籍は今まで以上に移籍市場に大きな衝撃を与え、間違いなく価格破壊を起こしました。
ロナウド、メッシ、ネイマールらのレベルではない選手でも今後このような移籍金が毎シーズン支払われるようになると考えると恐ろしいですし、「結局FFPは何のためにあるんだ」ってなりますよね。
ただ、これらに対してUEFAが黙っているはずがありません。今後なんらかの措置で少しずつ「抜け道」が減っていくことは間違いないです。
UEFAにるFFPの規制の改正や今後の変更などに注目が集まります。今回は以上です。
参照したサイト
①https://www.footballchannel.jp/2014/03/04/post29006/5/ −フットボールチャンネル
②http://web.ultra-soccer.jp/index/index/c/Transfer/id/page_4_1 −超WORLDサッカー!
③http://www.goal.com/jp/amp/ニュース/uefaネイマールとムバッペ獲得のパリsgへの調査開始を発表今後処分の可能性も/1wnj6dzobq18i1mdn89k7o8hqa −Goal.com